2007年11月08日

部活動の原風景

今週号のサッカーマガジン(11/20号)に、清水商業の特集記事が載っていました。

清水商業は、現在のJリーグで最も選手を輩出しているユースチームで、監督の大滝氏は昨年春にNHKで放送された「プロフェッショナル(仕事の流儀)」でも出演したサッカー界の有名人です。

今回の特集記事を読んで、その大滝氏の事を書いた三年半前のコラムを思い出しましたのでアップしておきます。

地元では賛否両論ある監督ですが、「タイトル獲得」という結果と、「プロ・代表選手輩出」という育成の両面で成果を残した事は、(個人的には)評価出来ると思います。

【部活動の原風景】2004.4.12

「背番号20、外でろ!お前みたいなやつはいらん!」
「ジャンプしないやつはとっとと帰れ!」
高校サッカー界で名将といわれる大滝監督のやや冷徹な声色の怒号が、グラウンド全体に響いた。

「いえ、やります!」
インプレー中にも関わらず、その生徒は必死になってピッチ内で嘆願の叫び声を上げた。

「今さら、『やります』じゃないよ!」
再度名将は冷徹な口調で怒鳴った。


4月11日、場所は清水商業グラウンド、インターハイ静岡県大会中部予選一次リーグ、清水商業VS清水国際での一コマだ。

毎年恒例の真夏のIH全国大会に向けた県予選が、11日静岡県中部・東部で一斉に始まった。(西部は18日開幕)

私は健康と節約を兼ねて、初めて静岡から自転車で日本平での試合(清水VSFC東京)を見に行ったが、スポーツ新聞の静岡版で10時開始でこのIH予選が清水商業であることを知り、出発時間を1時間半ほど早めて、日本平に行く途中にこの試合を観戦することにした。
(清水商業は旧清水市街地の中心にあり、静岡市街から日本平へ向う途中にあるので、それほど遠回りにならない。)

試合は何度もある決定機をことごとく外した清水商業が、PKでの決勝点で2−1で逃げ切りかけた後半終了間際、清水国際に左45度からの30M以上あるFKがバーに当たり、そのこぼれ球を決められ、よもやの2−2の引き分けで終わってしまった。

唖然とする清水商業イレブンの脇を意気揚揚と引き上げる清水国際イレブン、両チーム選手の対照的なリアクションが、この引き分けという試合結果の意味を端的に物語っていた。
(全国を目指して緒戦に臨んだ清水商業にとっては、さぞかし無念だったろうと察してしまった。)

冒頭のやり取りは、後半半ば(15分ごろ)の出来事だった。

交代して入った左MFの選手が、攻撃時に左サイドのロングフィードのハイボールを相手DFと競らなかった行為に対して、大滝監督が父兄・生徒など300人ほど見物人がいる中、グラウンド全体に聞こえる大きい声で叱責したのだ。

実は、このシーン程ではないが、試合中に大滝監督が嫌味のように選手達に吐き捨てる場面は多々あった。

「(DFラインはマンツーじゃないんだから、中央に寄れなきゃ駄目じゃないの?」
「(FKのセットで)いつまで準備してんの?」
「(速攻時に)あんた(守備的MF)が前走んなきゃ駄目でしょう?」

普段の大会では比較的おとなしい大滝監督だが、思い通りにならない苛立ちもあったが、自分の学校の校庭での試合に、練習時のようなよそ行きではない普段着の姿勢が出ていた。


そして、監督だけではなくピッチ上の選手同士でも、同様なやり取りが見られた。

「お前、そこもっと追えよ!」
「(攻撃から守備へ戻る際)お前目切るなよ!」(ボールから目を離すなよの意味)
「早く外開けよ!」

など、先輩と思しき選手数名が、後輩に対して激しい口調で命令していた。


考えてみると、選手同士はともかく、監督が試合中に自チームの選手を辛辣に怒鳴るシーンは、Jリーグや代表戦などプロの世界ではあなり見掛けない。(JFL/地域リーグでも見た事は無い。)
更に、同じ2種のカテゴリーであっても、クラブチームやトレセン・代表(選抜)でも私は見たことが無い。
(選手同士の言い合いはたまに見かけるが‥)


高校サッカーのような「部活動」独特の雰囲気といったら良いのだろうか?
(それにしても近年忘れられていた、独特の辛辣な雰囲気だった。)
好意的に見れば、先生>先輩>後輩という絶対的な指示体系を母体にした絶対的規律により、チームの緊張感を保ち、選手たちが精神的に強くなるのだろう。

豊富な運動量をベースに、球際の強さ・攻守の切り替えの強さ、そして勝利への現実的かつ貪欲な姿勢で、清水商業は数々の高校タイトルを手にしてきた。

ここ2年ほど低迷しているとはいえ、引き分けに終わったこの試合(清水国際戦)にも、80年代以降の高校サッカー界で頂点に位置してきた、厳しい伝統の一端を垣間見ることが出来た。

清水商業は、少年サッカーなどで中学までに出来上がった個人技をベースに、まさに「日本の部活動」の典型を極めたような、厳しい規律をもって勝って来たチームである。
日本の中学・高校の部活動にある序列(仕組み)を一様に否定する風潮が一方である中、清水商業・国見・市立船橋など「部活動」のチームがユース選手権で好成績を出し、更には代表選手を多く排出している現状は、決して無視できないだろう。

そう言えば、私自身も中高時代の部活動で、試合中先輩に何度も怒鳴られ、そして監督にも怒鳴られ、更には練習中に殴られた事も一度ならずあった。

自分で考えることが疎かになった部分もあったことは否定はできないが、今考えれば「やらない」ことや「出来ない」ことをはっきり言われたことは、現状での実力の認識や、チームプレーの意識付け、更には「負けず嫌い」という闘争本能を呼び起こすという側面では、非常に効果が有った様にも思える。

この日の、怒号飛び交う砂埃舞う土の校庭での試合は、まさに典型的な「日本の部活動の原風景」であった。

そして、それは私に20年以上昔の記憶を思い出させ、同時に、行き過ぎや取り違いの「自主性」への警鐘も考えさせてくれた。


蛇足だが、冒頭の大滝監督のセリフ「ジャンプしないやつはピッチを出ろ!」を、日本代表戦でジーコ監督にも是非試合中、大声で叫んで貰いたい。

特に左サイドバックの元ブラジル人に‥
posted by 東山米鈍 at 22:43| Comment(2) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
もう10年以上前に当時主将だった佐藤由紀彦が試合中に罵倒されているのをテレビの生中継で視たのを思い出します。

あの監督は選手の扱いに随分と差別や贔屓が激しいと聞きます。

そんな部分で一部のOB選手が勘違いや驕りでサッカー選手としての活躍以外で世間を騒がしてしまうのかなぁと思っております。


因みにこちらにも登場させますが元磐田の宝はドイツ1部リーグのチームでトップ契約する可能性も出てきましたね。

契約に至り出場した場合スポーツニュースはどんな扱いにするのだろうか?

Posted by 鬼退治 at 2007年11月17日 03:39
鬼退治さん、コメントありがとう。
大滝氏への評価は意見が分かれるところですね。贔屓や差別といった部分は確かにあると思いますし、静岡学園の井田氏同様、30年くらいの異例の超長期政権なので、ある種の組織としての硬直化もあると思います。
本当は、清水東・東海大翔洋などとの対立軸として、この「部活動の典型」の清商サッカーを論じてみたいのですが‥

あと、菊地直哉選手ですが、選手として復帰する事自体は、私は賛成です。
ただし、事件発覚から約半年というのは時期尚早という印象が拭えません。一般社会人でしたら問題ないかもしれませんが、プロサッカー選手としての社会に及ぼす影響や被害者の心情を鑑みると、少なくとも2〜3年はプロ契約は控えたほうが良いのではないでしょうか。

但し、この菊地事件で私はネット上の書き込み等に少し考えさせられました。
選手個人の犯罪等のネガティブな記事は格好のネタとなり、反論する存在がほとんどいない為に個人攻撃という一元的な世論を生み易いということです。

もちろん、この時の菊地の犯罪に弁解の余地は全くありません。特に性犯罪でしたら尚更でしょう。
但し、同時に同様の犯罪が他の選手に及んでいないかの検証や、サッカー界全体で再発防止の施策をするべきといった真面目な議論をネット上で見ることが少なかったのも事実です。
2001年秋のアビスパ福岡の未成年の選手が起こした事件以来、各クラブが選手管理を強化した筈だったのですが、5年以上経過して意識は風化してきたのかも知れません。
大相撲の時津風部屋の問題も各論で収束させられるようですが、この「菊地事件」も同様な終わり方をしてしまいました。
(各クラブはこっそりいろいろ対策をしているかもしれませんが‥)
Posted by 東山米純 at 2007年11月17日 20:18
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