都田名物とも言えるおびただしい横断幕の中の一つに、次のようなくだりがある。
「浜松産3FW やるぞ 80得点」
浜松産3FWとは、この日(4月25日)先発出場でそれぞれ得点を決めた、新田(清水商卒)・古橋(磐田東卒)・鈴木滋(聖隷学園卒)のことである。
彼ら3名で今シーズン80得点を目指そう!という意味であろう。
新田と古橋の2人の出身高校は浜松ではないが、確かに彼らは中学までは浜松市内に住んでおり、3名とも正真正銘の浜松産の選手である。
ホームタウンの街の出身選手だけでレギュラーFW3名を揃えることは、J1・J2・JFLを含めてもおそらくこのHondaFCだけではないだろうか?
彼ら3名に代表されるように、HondaFCには地元出身の選手は多い。
それだけ、このクラブが地域に密着しているという証拠だろう。
また、上記のような「浜松産‥」という横断幕を掲げ、「浜松ホンダ!」という応援コールを聞く限り、サポーター達も浜松のクラブであることに相当誇りを感じているようだ。
2種・3種・4種の下部組織を持ち、更には普及活動も盛んであるこのクラブは、公式HPでのクラブ紹介にも、
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アマチュアサッカーの最高峰 JFLで、Honda FCは、地元浜松にしっかりと
根をおろし、地域に愛され、ともに感動を分かち合えるチームでありたいと
願っています。
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と謳っている。
会社所有のサッカー場を持ち、更には駐車場やスタッフなど運営に至るまですべて自前、厚い下部組織や盛んな普及活動、地元出身の選手・スタッフ、地域に根ざしたファン・サポーター‥
まさにHonda FCはJリーグ の理想とする「おらが街のクラブ」の姿そのものである。
しかし、ここでひとつの大きな矛盾がある。
これだけ「地域密着」というJの理念に合致したクラブであるHonda FCであるが、JFLに所属して本田技研工業の企業活動の一環としての枠組みとなっているのだ。(クラブ運営はJクラブのような独立した会社ではなく、本田技研が行っている。)
これは「独立法人化」を鉄則とするJ リーグ機構へのかなりの皮肉である。
かつてJクラブ化への動きは何度かあったものの、JSL時代から頑なにアマチュアを貫いてきたこのクラブの姿勢は、基準が必要以上に厳しいJリーグ加盟条件への、無言のアンチテーゼになっているのだろうか?
「JFL優勝」と共に、「天皇杯でのJ クラブからの勝利」を二大目標に掲げるHonda FC‥
そこには「日本のサッカーシーンはJリーグばかりではない!」という、クラブスタッフや選手達の、強烈な主張が感じられる。
(2004.4.30記述)